THE SUPERIOR LABOR は、栃木レザーの革を主力で使用している。
国内外世の中には、たくさんの良い革がある。
作り手からすると、作りやすい革が良い革である。
繊維の質、粘りや堅さ。
革包丁がスムースに進むか、面取りが気持ちよく、コバ磨きが容易にできるか。
結果としてその様な革は、使い手からしても手にしっとり馴染み、経年変化を楽しめる
良い革になりうる。
ミモザの樹液からとれたタンニンを使い、ピット槽にじっくり浸け仕上げられる
栃木レザーのヌメ革。ピット槽でなめす手法は世界的にも少なくなっているという。
鞣すという事の基本は、生皮を腐らなくする事。
その過程を経て、脂を入れたり色を付けたり、シボをつけたり。
仕上げ工程を経て、様々な特徴を持つ革となる。
文字で書けば、鞣す工程を経る事で、皮→革 skin→leather へとなる。
僕が若い頃、国産ヌメ革といえば、染めが前提のカービングか手芸用というイメージで、
素材を活かすような使い道では無かったように思う。
当時よく使っていたのが、ハーマンオークやフランスのヌメ革で、
海外の革が主流だった。
TSLをはじめる頃に、栃木レザーの素上げのヌメ革を知った。
一枚仕入れてみると、今までのイメージが変わった。
原皮の厚みがありしっかり作られた、半裁のヌメ革。繊維の密で、色もよさそうだった。
そして価格も手頃。
良いといわれる高級な革はたくさんあるが、しかし良い革も使い方が重要で、元々生き物
だった革は、一枚一枚違う。また、半裁であれば一枚の中でも繊維の質は色々だ。
TSLで製品に使用するのは、半裁の2/3程度。その他三分の一は使用しない。
バッグのパーツに多く使用し、裏を当てずに一枚で使うとなると伸びやすい部分は使えな
い。勿体ないからと取っておいたが、使わないものは、やはり使わない。
この様な使い方なので、質が良く、価格が手頃でないとTSLの製品は作れない。
すべては、バランスのようだ。
今、TSLは、多くの革を別注で作っている。
たとえば、地味だがエンジニアバッグなどに使っている、厚口のヌメ革。
原皮を変えてのオリジナル。
また、このAWでは、ヌメ革にエンボス。
ブラウンにブラックを2度染めした茶芯といわれるもの。
また、既存の革の仕上げを好みで変更したものなど。
この様な、オリジナル作りは、代理店、栃木レザーの各担当者の動きの良さと人柄から可
能になる。そういう人達がいるから栃木レザーのヌメ革が好きである。
栃木レザー、その名の通り栃木にある。
震災の時、計画停電により生産枚数は激減したが、代理店、栃木レザーさんの努力によ
り、必要枚数は確保でき、みなさんに製品を届ける事ができた。
これらの事が可能になる理由は、日本製だからである。
細かなやり取りができ、そこに良い担当者がいる事で良い品質、良い価格の革が出来る。
世の中に良い革は数あれど、バランスの取れた良い革は少ない。
その様な革が、栃木レザーなのだと思う。